カーンチ

0
    評価:
    柴門ふみ
    フジテレビジョン
    ¥ 15,980
    (2001-09-19)

    去年テレビで東京ラブストーリーの映像を見かけて以来、これってどんなドラマだったんだろうと気になって最初から見た。このドラマが主題歌とともに人気大爆発したのは私が小学生の頃だが、まづ実際見てみてイメージと違ってたなと思ったのが、東京を銘打っときながら主要な登場人物4人のうち3人が愛媛出身者の愛媛ラブストーリーだったことである。
    その3人は織田裕二、江口洋介、有森也実で高校の同級生だった。織田と江口が有森に想いを寄せるような関係で、卒業後に離れ離れになってからも織田は有森のことを忘れられないでいたのだ。
    しかし私は最初の方では、この愛媛での同級生という設定が把握できないでいた。まず3人は同窓会で再会するのであるが、その同窓会が東京で開かれているのである。
    それに織田は昨日きょう上京したばかりの田吾作でありながら東京の大都会ぶりに戸惑う描写も特になく、愛媛出身者とも標準語でしゃべっているため、この高校というのは東京であって、織田だけが最初に愛媛の営業所で勤めていたのを愛媛出身と誤解してしまったのだろう・・・と自分を納得させたが、回を重ねるとやはり気のせいではなくみんな愛媛出身であることが分かった。しかし東京を銘打っている以上、織田の部屋のこたつに常に実家から送られてきたであろうみかんが用意されていることと最終話を除けば、愛媛色はきわめて希薄なドラマである。
    もう1人は織田の同僚であるLA帰り、赤名リカ演ずる鈴木保奈美だ。鈴木は織田と最初に会った時点で好意を抱いており、偶然にも前述の同窓会に合流したことで、4人はいつしか連れだって行動する仲になる。
    鈴木がサバサバで一途な帰国子女、有森が計算高くてしんきくさい愛媛女、と2人の対照的な役どころがポイントらしく、当時の女たちは圧倒的に鈴木支持派であり、関口さとみという役柄のみならず有森本人の嫌われぶりもすさまじかったのだという。しかし私は鈴木の変なノリに全くついていけなかったし、逆に有森がそこまで嫌われる意味も分からなかった。
    鈴木は何か薬でもやってるのかと思うテンションで普段は愉快にふるまっているが、よく分からないポイントでキレては人をぶったり水をかけたりと暴力にうったえ、あるいは紺ブレひらりひるがえして全速力で走りだしたりする。そのくせ自分は織田が嫌がっているのに執拗に「カンチ」と呼んだり、織田とつきあってからもネチネチと有森のことでからかったり、ゲスい下ネタで困らせたり、最後の最後でも洗って返すといった織田のハンカチに口紅で落書きして捨てて帰るなどモラハラ・セクハラの常習者なのである。
    いっぽう有森は男が好む家庭的な女を体現するべく、たいてい困り眉で不安げな表情を浮かべ、幼稚園の先生でありながら髪は長くおさげにして仕事中もぞろっとしたスカートをはいている。鈴木がいつもズボンで活発に走り回り、自分に正直に生きているのと対をなす存在なのだ。
    とくに高校時代に有森がソーダーに乗っていたさくらんぼの種を出すのが恥ずかしくて飲み込んだ、と顔を赤らめて話していたのを織田がデレデレしながら回想するシーンがあり、視聴者の女たちからあざといわぁーと総すかんだったらしい。でも女子高生が男の前で、吐き出そうとした種と一緒にびろーんとツバが糸引いたら恥ずかしいではないか。
    それに有森は幼稚園の同僚にも頻繁に料理をふるまっているのであり、男だけにいい顔をしているわけではないのだ。最初から有森と織田が真面目な奴同士くっつけばよかったものを、鈴木が「セックスしよっ」と色じかけしたり、江口が浮気を繰り返して引っかき回してしまっただけで2人は何も悪くないのである。
    また鈴木のほかに変なノリの奴がもう1人、妻子がありながら過去に鈴木に手を出していた上司の西岡徳馬がいるのだが、織田と鈴木がつきあってからも鈴木と2人で食事するし、織田にあにきヅラ(穴兄弟の)でアドバイスするのが納得いかない。しかし基本的にこのドラマは穴兄弟や竿姉妹が仲良くする設定が多い。
    これら多くの違和感をおぼえつつも、鈴木の常軌を逸した傍若無人ぶりがそのうち織田に本気でウザがられるなど展開自体は現実的であり、さすが月9のブランドを確立した作品なだけあって本放送から25年経った今見てもじゅうぶん鑑賞にたえうるものだった。90年代のドラマに欠かせない存在である織田・鈴木・江口を輩出した点からも、この作品が大きな転換点となったのは間違いないであろう。

    不朽の名作

    0
      作家の夏樹静子さん死去…「Wの悲劇」「蒸発」(読売新聞 3月21日)
      http://www.yomiuri.co.jp/culture/20160321-OYT1T50019.html


      先日テレビで現在の薬師丸ひろ子が「探偵物語」を歌うのを見かけたのだが、話す時も歌うときも若い頃の声とずいぶん変わったように感じられた。もしかしてあの特徴的な声は作っていたのだろうか。
      昔(25年くらい前)は今井美樹や高橋リナのような口裂け女が人気爆発していたために、個人的に薬師丸のおちょぼぐちダサイと思っていたし、角川映画も幕末純情伝とかREXとか痛いノリだったのだが、昭和50年代の角川と薬師丸には今見ても色あせない魅力がある。ただWの悲劇が公開された1984年あたりが角川、というか邦画がつまらなくなるターニングポントのような気がするが。

      「セーラー服と機関銃」の頃より髪の毛が伸び、大人っぽくなった20歳の薬師丸ひろ子が演ずるのは女優の卵である。前半は女優という夢と現実のはざまで揺れ動き、そのへんで会ったさえない元劇団員の世良公則と裸電球の下でちょめちょめしたりするのだが、後半ではある事件をきっかけに、大物女優役の三田佳子と共謀して劇中劇「Wの悲劇」の和辻摩子役をライバルから奪い取るスリリングな展開となる。
      舞台に立つシーンでは事件とセリフがシンクロし、和辻摩子を演じる三田静香、を演じる薬師丸ひろ子・・・と、現実と虚構が入り乱れてどこまでが演技なのか分からなくなる感覚におそわれ、冒頭で世良公則の語る芝居を辞めた理由がふと頭をよぎる。「あたしはね初舞台のときに怖くて生理が始まっちゃったの。それでもやったわよ、血にまみれて!」「そんな時オンナ使いませんでした?あたしはしてきたわ。あたしが今この舞台に立てるのも、楽屋が花でいっぱいになるのもあたしを抱いてくれた男たちのおかげかもしれない」などなど、三田佳子の凄みありすぎな名言の数々も題名の「W」(ウーマン)たるゆえんであろう。
      ネットではそういう演出をクサイと評するむきもあるが、それは1984年当時の軽チャーな雰囲気がそうさせただけであって、三田佳子の大物女優っぷりも素じゃないかと見まがうほどだし、下半身が乱れているところなどがリアルに劇団員っぽいと感じてしまった。何より努力や才能ではなくウソを重ねて和辻摩子の役を射止めたことや、三田村邦彦や世良公則などの男たちとなりゆきでねんごろになるところが、薬師丸にただ者ではない印象を与えることに成功している。

      江戸っ子逝ってよし

      0
        もう一か月ほど前の話なのだが、私がよく見ているニュース番組の「NEWS23」で江戸しぐさが特集されていた。
        江戸しぐさは10年前に公共広告機構のCMでも取り上げられていたので、ご存じの方もいるかもしれない。浮世絵みたいなタッチのアニメで、江戸時代のマナーに学ぼう。と現代人を啓蒙していたのであるが、最近それがほとんどウソってことで原田実著「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統」(2014年)という新書も出てちょっとした話題になっていたのである。

        公共広告機構江戸しぐさcm(YouTube)
        https://www.youtube.com/watch?v=PuFizpUhrhk

        その昔、江戸ではマナーが粋でした。

        急いでいて、道をゆずってもらったら、すっと感謝のまなざしを。

        いやぁ、いいもんだねぇ。
        ところかわって電車では、混んできたら腰をこぶしぶん浮かせて

        さっと席をつめる。
        ちょいとした心意気って、ちょっとうれしいねぇ。

        公共広告機構です。


        NEWS23しかり江戸しぐさ批判は「江戸しぐさの正体」の調査がベースになっており、この本が出たときちょうど江戸時代に多少興味があったので買ったのだけども、部屋が汚すぎてどこにあるのか今ちょっと分からなかった。そもそも何で江戸時代に興味わいた時期があったのかというと、江戸を持てはやしているのがたいてい左翼だったからにほかならない。
        典型的なのが、温暖化ゴリ押し期(2005〜08年あたり)に多く見られた江戸時代は循環型社会で理想の都市生活だというロハス的観点、あとひとつ男女がハメハメしているような浮世絵をもって江戸の性がオープンだったとするフェミニズム?的観点からの再評価である。後者は田中優子という左派の学者が研究しているのだけども、「江戸しぐさの正体」によればこの人も江戸しぐさをヨイショする立場だったとのことであった。
        そのあたりをふまえて単純に、やっぱり左翼なのか。と私などは思ってしまうのだが、江戸しぐさ批判の全体的な論調を見ていると、逆に保守系の人々が日本人の誇りをでっち上げるために考え出したということになっている。その根拠になっているのは育鵬(いくほう)社という出版社の公民教科書に取り入れられたということであり、江戸しぐさの正体も「教育をむしばむ」と副題がつけられているし、NEWS23でもこんなデタラメが教科書にまで載ってしまったってのがかなり強調されていた。
        この育鵬社ってのが、歴史修正主義の教科書を出版するために作られたフジサンケイ系の出版社らしい。もともと育鵬社は「新しい歴史教科書をつくる会」が元になっているのだが、つくる会という名前が慰安婦問題を調べているとたびたび出てくるのである。
        江戸しぐさに対する右翼が自民族を絶賛するためにありもしない伝統をでっち上げているって印象はおそらくこの出版社の属性にもとずくところが大きいと思うのだが、育鵬社の教科書に江戸しぐさが採用されたのは2012年とある程度CMなどで周知されて以降とのことなので、それが江戸しぐさの主犯格であるかのようにクローズアップすることが歴史修正主義は危険だよー。という左翼のキャンペーンに思えてしまう。
        しかもアングラサイトを閲覧していると本当にネトウヨみたいな人が江戸しぐさ批判に対して「せっかく良いことを言っているのに反日勢力が日本を貶めようとしている」みたいなこと言いだしているので混乱してしまうのだが、まず右翼は伝統が好きだから江戸時代を美化しているってのが、左翼=中韓好き&反天皇&ロハスみたいなのと同じく、ただの思い込みじゃなかろうか。
        私が見る限り右翼が美化しがちなのは戦前や高度経済成長期であって、江戸時代みたいに愛国心や靖国神社も存在しない平和で持続可能でていねいな手しごとで朝鮮人と仲良くてハメハメばっかりしていた未開人時代はどっちかというと左翼向けなのである。まあ江戸っ子大虐殺とやらが本当にあったのかどうかは知らんけども、とりあえず理想社会の江戸時代は明治維新されて終了した。
        である左翼の本(部屋が汚いのでどこにあるか分からない)で読みかじったところによると、維新を牽引したのが下級武士だったために明治以降は儒教など武士の規範が一般人にも押しつけられて、そっから江戸時代にはフリーダムだった性に対するタブーが生まれてきたということであった。これらをふまえても、育鵬社およびネトウヨ諸君は南京大虐殺や強制連行のように「江戸っ子大虐殺はなかった」と歴史修正するのが本来は妥当なのである。

        涙腺大崩壊

        0
          もうやってないかもしれないけど、「きっと、星のせいじゃない」という映画(何で原題と意味が逆なんだ)をけっこう前に見に行き、今からその感想文を書くにあたってネタバレするため、観る予定のある方は読まないでおくれ。
          そもそもこの作品を知ったのは、最近よく聴いているイギリス人歌手チャーリーXCXの代表曲「Boom Clap」のミュージックビデオに映画のシーンが挿入されており、何回も見ているうちにだんだんどういう話か知りたくなったのである。
          特に作品についての予備知識はないまま観に行ったため、冒頭で主人公である余命いくばくもないガン患者の少女がウツがどうのこうのと言われているのを見て、「重いな・・・」と、しょっぱなから全然おもしろい気がしなかったのだが、これがなかなかどうして初々しい恋物語ながらじつにテンポがよく、登場人物も魅力的で、クスッと笑ったり、号泣したりと、けっこうマジに話に入り込んでしまった。
          だから良かったといえば良かったのだが、なんか納得いかないものがある。けっきょく私が泣いたのは、若い男女が病気でかわいそうだからにほかならないからだ。
          なんかそれって映画としてガチじゃないような気がする。
          そもそも2人のなれそめが出会いがしらにドシッとぶつかるって今日び少女マンガでもお目にかかれないありえなさで、また相手役の彼がお調子者でありながらふいにワケありな表情を見せた時点で「絶対こいつの方が先に死ぬ」と思ったら本当にそうなったし、最初らへんで「OK」と合言葉を決めているときに、どっちかが死んだときに手紙かなんかでOKって言葉が出てくるだろうなー。と思ったらそれも的中した。こんなベタな展開で号泣した自分が恥ずかしい。
          あとオランダに行くくだりって必要なのだろうか?くだんのチャーリー氏のミュージックビデオもオランダロケだったのだが、あのねじ込みっぷりはオランダ観光局のゴリ押しステマとしか思えん。
          まあ気になってた映画がどんなのか知れてスッキリしたし、何だかんだおもしろかったのでよしとしとこう。

          まずい、何か爆発したぞ

          0
            フジテレビ特番「8.12日航機墜落 30回目の夏 生存者が今明かす“32分間の闘い ”ボイスレコーダーの“新たな声”」を見た。
            1985年に起きた事故だと記憶していたため「30回目の夏」の触れ込みに一瞬惑わされたが、やはり正確には29年である。
            事故の3日後がちょうど終戦40年の節目であった。おそらく左翼風味な戦争特番も予定されてたんだろうが、これで吹っ飛んだであろう。
            バブル的浮かれモードにさしかかっていた当時の日本。なんとも平和なお盆休みに、突如として出張ビジネスマンや帰省客が520人も命を落とした衝撃度ははかり知れない。
            今年に入ってからは韓国で船が沈没したり、マレーシアの飛行機が墜落したりといった大惨事が立て続けに世界を震撼させるたび、この事故を思い出さずにはいられなかった。 特に4月ピーチアビエーションの飛行機が低空飛行したさいにニュースで流れた「プゥプゥ プルアップ、プゥプゥ プルアップ(上昇せよ)」というトラウマな警報音は、モロ日航ジャンボの悪夢再び以外の何物でもない。
            今回の特番に関しては日曜日に宮根誠司のワイドショーで告知されており、音声の専門家がボイスレコーダーからノイズを取り除く様子を放送していた。
            あのボイスレコーダーはYouTubeで何度か聞いたことあるが、確かに音声がけっこうクリアになっていた。「まずい」「終わった」など新たに数か所ほど高濱雅己機長の言葉が聞き取れるようになり、爆発音も3段階に分かれていたことが分かったという。
            私個人の印象では、機長は最初テロか何かだと思っていたようなリアクションだった。
            今日はそれに加えて、親子で生存した吉崎博子さんの証言を基にした再現ドラマが放送された。ところどころ当時の映像が出てきたのだが、そこで退院後に会見する吉崎さんを初めて見た。
            吉崎さんは顔に傷を負っている写真しか見たことがなく、跡が残ったんじゃないかと思っていたが、映像を見る限りずいぶん綺麗に治っていたようだ。しかしただでさえ弱っているのに、ヘリで吊り上げられるさい風にあおられ空中で担架がクルクル高速回転してしまったところはかわいそうだった。
            吉崎さん証言によれば、墜落寸前には多くの乗客が失神していたとのことである。

            生存者は吉崎さんと娘、スチュワーデスの落合由美さん、中学生の川上慶子さんのたった4人だけだった。彼女たちが座っていた後部座席は事故当初生存者がいたくらいだったが、それ以外の遺体は基本的に損傷が激しく、また真夏ということもあって腐敗もすすみ現場の悲惨さは相当なものだったようだ。
            そのへんは飯塚訓著「墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便」に詳しいが、すでに取り上げたので、今回は事故の5年後、1990年に出版された朝日新聞社会部編「日航ジャンボ機墜落 朝日新聞の24時」についてである。
            私はてっきり朝日新聞が目撃者や遺族を取材して事故の経過をまとめてくれているのかと思いきや、よく見ると「朝日新聞の24時」ってだけあって、大半が朝日新聞記者の頑張りの記録であった。
            「popeye物語」を読んだときも思ったのは、記者の名前を何人も出してこられたところで、マニアックすぎてこっちには誰が誰だかさっぱり分からんってことだ。一般人が業界の裏話におもしろさや憧れを感ずるノリって、80年代までだろう。
            「天声人語担当の論説委員は、すでにこの日の原稿を書き上げ・・・」だの「サンタロウ(朝刊社会面のマンガ「フジ三太郎」)を13版からはずしてとくにトラブルはなかった?」だの、どーでもよろしいがな。って内輪ネタがほとんどな中、通信部長の実弟が、ボイスレコーダーに声も残っているチーフパーサーの波多野純さんだったエピソードには読ませるものがありそうだったが、ボリューム的には2ページだけだった。
            最後らへんでボイスレコーダーの音声を文字起こししているが、確かこの時点ではまだ音声は公開されていなかったはずである。あれは2000年代以降になってマスコミにテープが送られたから、普通に聞けるようになったのだ。
            それまでは「どーんと行こうや」「もうだめかもわからんね」などのセリフから、高濱機長が誤解されることもあったらしい。それって、片桐機長よろしく「どーんと山にぶつかろう」って解釈されていたということか?
            まぁ何にせよ、あのボイスレコーダーを文字で読むのと、実際に聞くのとではまったく緊迫感が違うものである。

            写真は当時の週刊誌より

            何かが物足りない

            0
              評価:
              ---
              角川エンタテインメント
              ¥ 6,980
              (2007-08-03)

              吉原遊郭を描いた映画「さくらん」。
              思ったほど悪くなかった。絶対好きじゃない感じがしていたのだが・・・
              土屋アンナ(どう見ても外人)が花魁な時点で明らかにありえないものの、時代考証はもう別に江戸とか詳しくない人でも分かるレベルのガン無視っぷりなので逆に気にならない。
              というか土屋アンナを一度たりとも綺麗だとか可愛いだとか思ったことがないのだが、粗暴ななかにも愛嬌があって、ビジュアル的にも蜷川実花特有の極彩色世界に負けていなかったと思う。
              しかし、それにしてもこの映画は内容がない。
              いちおう吉原は、幕府がお墨付きを与えた格式高い高級遊郭。花魁クラスになれば、相当な教養も求められるはずなのだ。
              それなのになぜ、土屋アンナはいつまでたってもガラ悪いのだろうか。
              別にあれだったらリーズナブルな岡場所でもいいし、誰も病気や心中もしないようなので何なら現代のNo1キャバ嬢でもいいはずだ。
              ただ作中には金魚というモチーフが存在し、金魚鉢の中で逃げられない金魚が、周囲を「お歯黒どぶ」で取り囲まれていた吉原の遊女に重ね合わせられている。
              吉原である必然性を考えるとするとその一点と、あとは衣装の絢爛さくらいだろう。
              だが吉原の外へはけっして出ることのできない女の悲しい運命・・・みたいなのも、全然ない。出入りしてたし。
              とにかくすべてにおいて軽い。
              濡れ場で菅野美穂や木村佳乃がちくびを死守するあたりも、きわめて不自然である。椎名林檎のロック音楽を大音量で流すなどトンガってるわりに、脱ぎっぷりの悪いのがかえって間抜けなのだ。
              そもそも遊女はあまり服を脱がなかったらしいので、無理してちちを出さなくてもよかったのかもしれないぞ?
              amazonでレビューを見た限り、この映画は原作の漫画を台無しにしているといった書き込みがよく見られるので、もともとはちゃんとストーリーがあるのかもしれない。
              にしても最後らへんで土屋が大名に身請けされる(嫁に行って吉原脱出)ってな展開があったのだが、そのような例もなくはなかったようだ。高級といえど貧農出身であろう娼婦が大名に嫁ぐとは、江戸時代における強固な身分社会というイメージがまたしても狂いそうである。
              むろん花魁を嫁にもらうとなると、かなりの補償金は払わなければいけなかったようだが。
              今週26日(木)からはNHKで午後8時より、時代劇「吉原裏同心」も始まるのでそちらもチェックするとしよう。

              劇中に出てくる言葉や制度など
              禿(かむろ)
              妓楼に売られた少女で、花魁の身の回りの雑用をこなす。
              本当は大五郎のような変わった髪型だが、「さくらん」では現代風にアレンジされていた。
              水揚げ
              突き出し(デビュー)の前に、女の扱いに慣れた初老の客で初体験をすませる。
              三つ布団
              花魁は敷布団が3枚重ねになっている。
              間夫(まぶ)
              本命の男。手持ちの文献では「情男(いろ)」となっているが、おそらく同義。
              他の客をおろそかにすると男が登楼禁止になったり、遊女も折檻を受けたりした。
              横兵庫
              巨大に結われた高級遊女の髪型。

              borderline

              0
                深夜にテレビで放送されていた「セックス依存症だった私へ」(2008年)。
                助平な映画でもやってんのかと不純な動機で食いついたところ、精神病の母親に育てられた主人公の鬱な人生を描く思いのほか重苦しい作品だった。
                制作はカナダだが、登場人物がしゃべっているのはフランス語だったのでフランス映画ということになるのだろうか。
                何ともインパクトのある邦題に反して、原題は「ボーダーライン」とけっこう地味であり、その意味するところは「境界性人格障害」という精神病の一種のようだ。
                ちなみにこの病は、香山リカが橋下徹に勝手に診断して物議を醸していたと記憶している。
                だがわれわれはボーダーラインとか境界性人格障害とか言われても、あまりピンとこない。そんなわけでこの映画を輸入した業者が「セックス依存症」という邦題をもって、エロい奴の耳目を引きつける作戦に出たのだろう。

                主人公のキキは30歳前後とみられる物書きで、その挙動は全盛期の浅野温子ばりに落ち着きがない。自らの病んだ人生を本にしようとしているのだが、指導を受けている大学教授と不倫している。
                この親ほど年の離れた大学教授は不倫もさることながら、キキに家族のことを晒すようアドバイスしながらも、自分のことについては書くなと言ったり、ずいぶん勝手な奴だ。
                なぜか背中にオウム真理教みたいなマークを彫っているのがまた気色悪い。

                シワシワなうえに乳と腹が出ていて爺のセックス見たくねぇ・・・って感じなのだが、演じているジャン=ユーグ・アングラードは約30年前に「ベティー・ブルー」というフランス映画で一世を風靡したイケメン俳優なのだそうで、その当時の画像を検索したら、本当にイケメンすぎてびっくりした。

                そんな教授との不倫に苦しみながら執筆活動を続けるキキと並行して立ち現われる、若いころのキキと10歳ごろのキキ。異常な家庭環境のなか甘えることを知らないまま変に大人びてしまった少女は、やがて人種、性別、体重問わず誰にでもお股をくぱぁっと開くとんだアバズレ女に成長した。
                派手な化粧をしてゴーゴークラブで酒をラッパ飲みするようなすさんだ生活からは足を洗ったものの、やはりキキは健全な人間関係を築けないままでいる。その寂しさを癒すためか、かたわらにはいつも飼い犬が寄りそっているのだった。
                で、ここまらネタバレになるのだが(といっても、これといったストーリーがあるわけでもないのだが)、最後らへんはどうなるかというと、キキが教授と待ち合わせしたレストランで約束をすっぽかされ1人飲んだくれていると、彼女に思いを寄せていた顔見知りの菓子職人が声をかけてきて、そのまま彼の家でひとつになるのである。
                キキはこれまでろくな恋愛をしてきていないがゆえ、どうせこれがお目当てなんだろ。と先手を打つかのように家に入るなり自ら裸ん坊になり、ベッドでクネクネしながら、ちちを吸うように誘うのであるが、菓子職人はというとがっつく様子もなく、せかされながらも優しく抱いてあげるのだった。
                そして翌朝、キキが起きてくると菓子職人は彼女のために焼きたてパンやフルーツを用意している。彼は眠るキキを夜じゅう見つめていたと言う。
                今までの男とは違う菓子職人のあたたかい愛情に、戸惑いながらもうれしく思うキキ。映画は彼女が本を書き上げ、教授と泣きながら最後のセックスをする物悲しいシーンで幕を閉じる。

                これを病んでてカッコいいだろう。とドラマチックに描かれていると冷めそうなところ、あくまで淡々と話が展開されるためについキキに感情移入してしまったのだが、キキが母親に対して犠牲者じゃないとかなんとか言ってるいっぽうで、教授との関係では「あそばれた」とでも言わんかのような被害者意識をのぞかせるのは、ちょっと納得いかなかった。
                「人形」「ピエロ」というのが鍵になっているようだが、これはみじめなキキの姿を投影しているって意味なのだろうか?
                しかし子供ができたり性病をうつされたりして逃げられたとかならまだしも、自分だって相手が既婚者だと分かったうえでセックスを楽しんだんだから、つべこべ言いなさんな。

                美術番組への不信感

                0
                  戦後まもなく行方不明になっていた喜多川歌麿の肉筆画「深川の雪」が発見されたことを受け、NHK「歴史秘話ヒストリア」に続きNHK教育「日曜美術館」でも特集が組まれていた。

                  「深川の雪」「品川の月」「吉原の花」の「雪月花(せつげっか)」三部作、一時は全部行方不明だったのがここにきて全部揃ったとのことで、なんとも喜ばしい限りである。
                  それにしても深川、品川、吉原といえば当時を代表する風俗街。
                  いきいきと描かれている女たちも、ほとんどが遊女であろう。
                  そんないかがわしいテーマを壁掛けの大作にする江戸時代の感覚は、今ではちょっと信じられない。
                  しかし浮世絵に関する書物を読むと、当時の遊女は日陰者どころか庶民の憧れの存在といった一面があり、ファッションリーダーに相当するとかいったことがよく書かれている。
                  とすると当時の深川、品川、吉原はさしづめ、渋谷、原宿、表参道、といったところなのだろうか?
                  じっさい歌麿の美人画は、着物や髪型などファッションの描写に力が入っているように見える。

                  それはそうと「日曜美術館」司会の中年男性・・・どっかで見たことあるような・・・

                  あ、是枝裕和監督「空気人形」に出てたビデオ屋の兄ちゃんか。

                  井浦新(いうらあらた)。いまいち特徴のつかめない顔なのだが、よく見ると永瀬正敏、オダギリジョーあたりに通ずる、いかにも日本映画ってなサブカル感をそこはかとなくかもしだしており、美術番組の司会もおそらく俳優だけにとどまらない文化人的素質を見いだされてこその起用だったにちがいない。
                  たまたまというか「日曜美術館」が終わった後、是枝監督の出演する番組が宣伝されていた。
                  ふと、NHKがこんなに是枝ファミリーを推すということは、この人たちって憲法9条とか好きなんじゃなかろうか。と思い検索してみると、やはり是枝監督は10年ほど前に9条をテーマにしたドキュメンタリーを撮っていたそうだ。
                  よくよく考えたら「日曜美術館」って、前は姜尚中が司会してたよな。
                  アートだなんだとうんちくたれたとこで、結局はNHKの教養番組にありがちな左翼のステマ電波かもしれぬ。

                  人形より美しい韓国人

                  0
                    評価:
                    ---
                    バンダイビジュアル
                    ¥ 3,335
                    (2010-03-26)

                    板尾創路がダッチワイフとハメハメしているシーンをテレビで見かけたとき、子供が寝ている時間帯なのをいいことにいかがわしい映画でもやってんのかと思ったが、この「空気人形」(2009年)なる作品、「誰も知らない」「そして父になる」で知られる是枝裕和監督によるものだった。
                    私は以前にも是枝作品である「幻の光」「ワンダフルライフ」を知人の勧めで見たことあるにもかかわらず、いづれも意味不明だったという以外には何ひとつ記憶に残っていない。
                    のちに監督が有名になってからその才能をいち早く見抜いていた知人の先見性に驚くとともに、また見てみようかしらん?という気にはなっていた。「空気人形」はまったくの初耳だったが。
                    いわゆるダッチワイフの「のぞみ」が心を持ち始め、持ち主であるさえない中年男を演ずる板尾がビッグボーイ(ハンバーグレストラン)に勤めに行っているあいだに、おしゃれしたり、化粧したり、ビデオ屋でバイトしたり、またそのバイト先で恋に落ちたりもする。
                    のぞみは「空気人形」といわれるだけあって、空気が抜ければプシューッとしぼみ、おなかの穴から空気を入れればまた元に戻る設定となっている。
                    私はやはり深夜にテレビで見た「ラブポップコレクション」(2012年)というVシネを思い出していた。
                    このVシネは三部作になっていて、ヒロイン3人それぞれがネットで格安ダッチボーイの「あっくん」をレンタルするエロしょうもないコメディだったのだが、そのあっくんも背中にネジがついており(巻かないと止まる)、子供のように言葉をたずねてみたり、途中で壊れかけたり、ゴミ捨て場に粗末に捨てられたりと、のぞみとダブるようなシーンが多かったのである。
                    ピュアなセックス人形と人間が心通わせる、というジャンルでも存在するのだろうか?
                    もちろんVシネのほうがショボいのだが、あっくんのほうは空気人形ではなくアンドロイドであり、言葉こそ話せないものの最初から多少の知能はプログラムされていたので、人間と遊びまわっていても何らおかしくはなかった。
                    その点、ただの人形であるはずののぞみがスタスタ歩いたり話したりするのには唐突さがいなめず、飲食のシーンでも、あっくんが飲んだビールを下半身からそのまま出していたの対して、のぞみはレストランでおシャンティな料理をパクパク食べてそれっきりである。
                    いったい、口に入れたもんはどこに入ってんだ。フィクションにこんなこと突っ込むのが野暮ってもんだろうが。
                    途中から「からっぽ」「かわりはいくらでもいる」という、現代人の空気人形性が浮き彫りになるキーワードと「誕生日」がキモになってきて、おもしろさが理解できるかと思った矢先、意味不明で痛々しいクライマックスにより、その期待はドン引きに変わった。
                    ただ一人一人の役者は悪くなく、ボロアパートで1人のぞみを愛する板尾のガチで気味悪い演技と、のぞみ演ずるペ・ドゥナの存在感には最後まで引きこまれるものがあった。
                    それにしても、はかなげな色気の中に少女のあどけなさものぞかせるのぞみが、まさか30代の韓国人女優だったとは。確かにセリフの中でそれらしいなまりはあったのだが、韓国人特有の人工っぽさがないので全然わからなかった。
                    透きとおるような美肌と手足の長さが本当に人形と見まがう素晴らしさで、実年齢よりかなり若く見える。
                    しかし韓国人と言われてみると、日本でこういう不思議な魅力をかもしだせる女優って確かにいないかもしれない。
                    そういえば作中で韓国でも有名なオダギリジョーがダッチワイフ職人として出てきたり、ペ・ドゥナは韓国で大人気の蒼井優と雑誌で共演したこともあったようで、もしかすると今作品に限らず、映画界は日韓交流が盛んなのだろうか?
                    実際に見たことがあるわけじゃないんだが、私が知るだけでも倉科カナ主演「花子の日記」(2011年)、T-ARAのヒョミンが出演した「ジンクス!!!」(2013年)など、日本映画に韓国人がキャスティングされることは近年めずらしくなくなっているようだ。

                    立体視考

                    0
                      先日、私は映画「ゼロ・グラビティ」でようやく3D初体験した。
                      「アバター」を劇場まで見に行かなかったのを長らく後悔していたため、3D映画が終了する前に一度は見ておきたかったのである。
                      今作品は宇宙船から投げ出された宇宙飛行士の話で、タイトルの「ゼロ・グラビティ」は、英語で無重力を意味する。
                      私はこのタイトルが覚えられず、「ゼロ何とかっていう映画見に行こう」と友人を誘ったところ、かたくなに断られた。
                      「戦争賛美の映画なんか見たくないね」
                      ・・・これ宇宙戦争の話だったっけ?私は不思議に思ったが、その後もネトウヨがどうのこうのと話が噛み合わず、「永遠の0はゼロ戦の0なんだよ」と聞いたとき、ようやく「ゼロ・グラビティ」と同時に「永遠の0」という邦画が上映されていることを知った。
                      というかむしろ、そっちのほうが話題作らしい。
                      しかも「ゼロ・グラビティ」の原題は「グラビティ」(重力)。つまりまるっきり逆の意味であり、ゼロなんてひとことも言っていなかったのだ。私のネトウヨ疑惑ははれたものの、なんとも迷惑な邦題である。
                      3D映画は字幕が邪魔になるせいか、吹き替えしかなかった。テレビならまだしも、劇場で吹き替えとはやや抵抗があるが、いたしかたない。
                      それでまあ、肝心の「飛び出し」。この映画の主旨は3Dによる宇宙空間の擬似体験であり、ゼロ・グラビティに放り出されるサンドラ・ブロック演ずるストーン博士、仲間みんな死んでピンチ!酸素少ないピンチ!ごみが飛んでくるピンチ!火事ピンチ!いやでもなんとか帰れた!と、ハラハラさせるだけで特にこれというストーリーがあるわけではない。
                      おととし2Dで見た「プロメテウス」も異星で女性がサバイバルする、似たようなパニック映画だったが、あっちのほうが男女がちょめちょめしたり、怖いイカ怪獣が出てきたりと、まだ内容があった。
                      なんせ登場人物が実質ストーン博士1人だけ、舞台は宇宙だけ。無重力空間は、どうやって撮っているのか分からない金のかかってそうな不思議なCG映像ではあったが、それが飛び出したからといって、リアルに見えるわけではないのだ。
                      映画っちゅーもんは四角い枠の制限があり、アングルがコロコロ変化し、人間が小人サイズになることもあれば、顔が現実にありえない大きさでドアップになったりもするのだから、そのつど飛び出せば逆に不自然にさえ感ずるのである。
                      昔、ディズニーランドにあった「ミクロアドベンチャー」とかいう3Dアトラクションは、確か人間が実物大かつカメラも固定だったのでまだリアルだったが、その手法を普通の映画に応用することはまず不可能であろう。
                      3Dが低迷するのもよく分かる気がした。映画でさえそうなのだから、テレビはなおさらだ。
                      そういえば3Dブームが創出されていたのはK-POP伝来と同じ2010年(「アバター」が2009年12月公開)。3Dテレビは、韓国がK-POPブームを足がかりに売り込みをはかっていた韓国製品のひとつだった。
                      当時、一部K-POPアイドルのミュージックビデオに存在していた3Dバージョンも、通常版と比べるしょぼいCGやカメラの前で手を突き出すような仕草が多く、飛び出し効果を出すためにかえって映像としての質を犠牲にしているという印象を受けた。
                      家電量販店のテレビの前に備えつけられた黒メガネも、もう久しくお目にかかっていない気がする。あんなんも、地上波が止まる前は売れたんだろうか?2Dの高画質をそこそこいい音で見たほうが、よっぽど自然で臨場感あると思うのだが・・・
                      「ゼロ・グラビティ」みたいな3Dありきの映画も、2DもしくはDVDで見たところでたいしておもしろくないはずだ。結局、それは映画としてレベル落ちてるってことじゃないのか。
                      ストーン博士の人となりは、彼女自身の自分語りでしか見えてこないし、宇宙服のままどっか消えたジョージ・クルーニーは、せっかくだから顔も出しとかないとマズいのか、ものすごくしょうもない夢オチで再登場したりする。
                      ラストは無事生還したストーン博士が良い具合に海に落ち、唐突に終わる。それがどこなのか、どうやってアメリカに帰ったのか、想像すらつかない。
                      だだっ広い宇宙の怖さを引き出すために、あえて出演者を1人だけに残し、地上のシーンがないのだということなのだろうが、帰った後くらいは地球でのストーン博士の素顔を見せてくれたってよいではないか〜。

                      | 1/1PAGES |

                      profile

                      calendar

                      S M T W T F S
                            1
                      2345678
                      9101112131415
                      16171819202122
                      23242526272829
                      30      
                      << April 2017 >>

                      selected entries

                      categories

                      archives

                      recent comment

                      recent trackback

                      search this site.

                      links

                      others

                      mobile

                      qrcode

                      PR

                       

                       

                       

                       

                      powered

                      無料ブログ作成サービス JUGEM