リスク評価の是非

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    評価:
    菊池 誠,松永 和紀,伊勢田 哲治,平川 秀幸,片瀬 久美子
    光文社
    ¥ 821
    (2011-09-16)

    以前このブログでゼロリスクについて書こうと思っていたのだが、途中から江戸の本ばかり読んでほったらかしになってしまった。エロい本を読むのは容易でも科学に関しては不得手で新書レベルでさえ基本的に何書いてんのかよく分からねぇという個人的問題もあり、調べようという気持ちはありつつも読むのがおっくうになったというのが正直なところだ。
    そもそもゼロリスクが何なのかということからである。
    人間が近代的な生活を送るにあたって共存しなくてはならないリスクをゼロにせよという、原発や添加物、予防接種など幅広いジャンルにおけるナチュラル系市民運動の無茶ブリが「ゼロリスク信仰」「ゼロリスク幻想」と一部で揶揄されているのであるが、私はこの概念に関して以前から腑に落ちない思いでいた。
    ゼロリスク批判は、無添加食品の腐敗リスクや天然の毒性物質(フグ、毒キノコ等)を例に挙げて、実は人工で恐ろしげなる添加物も適切に使えば十分に安全なのだという理屈らしく、原発事故についても同様に、放射能の害をタバコなど生活に密着したポイズンと比較してその恐ろしさを相対化する例がいくらか見られた。
    だが私は思うのだ。「脱法ハーブ」じゃないけど、「ゼロリスク」なんて言ったら逆に安全っぽく、ロハス野郎がたんなる神経質であるかのような誤解も与えてしまうんではないかと。実際の過激派は自宅出産や感染パーティ、ホメオパシーなどの例をあげるまでもなく、ゼロリスクどころか自ら死のリスクに身を投じる超リスキー野郎であるにもかかわらずだ。
    そういった意味でロハス野郎がコストをかけようとしているのは、間違いなく(人命の)「安全」ではない。「自然」「幸せ」「スロー」といった、何やらよく分からない天然趣味のために「安全」はもっとも軽視されやすい傾向にさえあるともいえる。
    ゆえにロハスな野郎は自らをゼロリスクだと名乗るわけではないし、実際の行動も全くゼロリスクではない。
    ゼロリスク批判においてしばしば「不安」「煽る」「騒ぐ」「商売」などのおどろおどろしい表現が付随するのを見るかぎり、奴らを感情的で不当に金儲けをしている悪者だとほのめかしているようにしか読めないのだが・・・根拠の是非はともかく、そんな道徳的な問題まで言及しなきゃいけないもんなんだろうか。製薬会社はみずからの利益のためにインフルエンザの危機を煽り人々を不安にさせ〜って類の印象操作と、何が違うのか私にはよく分からない。
    もっとも、科学技術や大企業に対する強硬な左翼的態度が「ゼロリスク」と言われるゆえんなのは理解できる。しかし、それら現在の近代的な生活を前提とする批判を読むにつけ、人類って添加物や原発のリスクと共存しなければ生きていけないもんなのか?といった、根本的な疑問も浮かんでくる。原発のない時代は原発事故のリスクがゼロだったのは間違いない。
    個人レベルの話であれば、現代の快適な生活と比較していくらでも昔を悪く言うことはできる。だがせいぜいここ40年50年の間に出てきたようなもんを、なくてはならない、とはどうしても思えないのだ。
    ゼロリスク志向は新しいテクノロジーの危険を大きく見積もってしまうとされている。例えば遺伝子組み換え作物。
    「人が食べたことがない物の安全性は分からない」といった反対派の意見に対し、著者の1人である松永和紀氏は「人類が長く食べ続けて安全性を証明してきた食べ物など存在しない」「品種改良された農作物は何も言われないのに、遺伝子組み換え食品だけが反対されるのは不公平ではありませんか」(128ページ)と、ひろく受け入れられている米や野菜の品種改良を引き合いに出してその危険性を相対化するのだが、ロハス業界では江戸野菜など近代以前の在来品種が再評価されており、最近も種子メジャーへのカウンターとおぼしき「よみがえりのレシピ」とかいうドキュメンタリーをやっていたので、いちがいに不公平とも言えないだろう。公平だから良いかというと、それはまたよく分からないけども。
    しかし大きく見積もりすぎだと言われたとこで、人間の経験したことのないリスクをいつの時代にも存在する食中毒や熱射病の恐ろしさで相対化して「科学的」「定量的」とかいうのには、どうもついていけないものがある。

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