右翼史観への疑問

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    小籔千豊,う?み,TOMI YO
    ネギヤキ
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    (2008-02-20)

    先日、最高裁判所で夫婦同姓に合憲の判決が出て夫婦別姓派が落胆したとニュースは、多くの方がすでにご存じのことかと思う。私にとってこの夫婦別姓は一票の格差と同種の、今ひとつピンとこない系裁判なのだが・・・



    最高裁 夫婦別姓認めず…分かれる賛否、議論必要(読売新聞 12月17日)
    http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/20151217-OYT8T50015.html

    民法の夫婦同姓の規定を「合憲」とした最高裁の16日の判決に、選択的夫婦別姓制度の実現を訴えてきた人たちは落胆の表情を浮かべた。  
    一方、同姓を支持する人からは安堵の声も聞かれた。ただ、同姓が国際社会で「差別的な規定」と指摘されるなど問題点は残っており、今後も継続した議論が必要といえる。  
    ・・・
    同委員会委員長で弁護士の林陽子さんは「委員会が出した勧告を各国には尊重してほしいと考えているが、今回の判決の多数意見はそれを無視した形で残念」と話す。日本の立法、行政、司法いずれも男女平等への取り組みに熱心でないと、国際社会から受け取られかねないと懸念する。  
    「ただ、女性判事の3人全員が違憲と判断した点には希望を感じた。当事者が疑問の声を上げ続けることで世論が高まり、議論が深まっていく。今後も議論を続けていくことが大事ではないか」と語った。


    ただ確信をもっていえるのは、一票の格差にしても夫婦別姓にしても左翼の運動なんだろうということだ。左翼とひとことでいってもジャンルが多岐にわたっていて私はそのうちのごく一部しかノリを把握しきれていないのだが、中でも夫婦別姓はフェミニズム系の運動であることが報道記事などからうかがえる。
    そのために夫婦別姓の運動に反発を抱く保守系の著名人も少なくないようで、下に引用した「リテラ」っていう左翼のサイトによれば吉本興業のお笑い小藪千豊もそのうちの1人だったようだ。私は小藪氏のお笑いはあまりよく知らないのだが、この人がサピオとかそういう系の、櫻井よしこが出てそうな感じの雑誌に出ていたのを見たことあるし、リテラによる「例によって小藪千豊」「以前から本サイトでは小藪の保守思想から発せられる放言」などの言い回しから、小藪氏がケントギルバートと同様にネトウヨ芸人として左翼から敵視されているのは間違いない。

    小藪千豊が夫婦別姓をドヤ顔で猛批判! 「夫婦同姓は何億年続く日本の伝統」「別姓を主張する女は不幸になる」(リテラ 12月3日)
    http://lite-ra.com/2015/12/post-1743.html

    今月16日に最高裁大法廷で憲法判断が示される「選択的夫婦別姓」の問題。反対派の「別姓にすると家族の一体感が失われる」という意見に対し、先日、イノッチこと井ノ原快彦が「まあ、(氏名が)同じでも、一体感がないときもあるからねえ」「他人同士でも一体感は生まれるから」と述べたことを本サイトで紹介したところ、賛同の声が多数寄せられた。しかし、今度はイノッチとは逆に、選択的夫婦別姓に猛反発する芸能人が現れた。その人物とは、例によって小籔千豊である。  
    小籔が別姓に猛反発発言を行ったのは、12月1日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ)でのこと。この日の特集テーマは「夫婦別姓」だったのだが、小籔は話を振られるや否や「まあ、ぼくはどっちでもエエよと。(声を強めて)そんなにイヤなんやったら!」と宣言。しかし、つづけて出てきた言葉は「どっちでもエエよ」どころか“別姓なんか許してたまるか!”というべきものだった。
    この何億年と日本がずっとしてきたことで、その人自身がイヤやということで、いままでの人たちを否定するがごとく変えたい、そこまでの熱あるんやったら、じゃあ変えたら? 好きにしぃって思うんですけど。じゃあ理由聞いたときに、『あー、なるほど、その理由ですか』っていうのに、僕いままで一度もあったことないですね。失礼ですけど、だいたい、しょーもない理由で。アホな芸人の言うには、ですけど」  
    ・・・
    以前から本サイトでは小籔の保守思想から発せられる放言を紹介してきたが、いやはや、今回の発言はほとんど暴言だ。というより、あまりにバカバカしすぎてため息が出る。  
    まず、小籔は夫婦同姓を「何億年と日本がずっとしてきたこと」「脈々とつづいた制度」と言うが、これが根本的に間違っている。  
    元々、日本において国民全員が「氏」を名乗らなくてはならなくなったのは明治以降のこと。明治民法によって夫婦同姓が定められたのは明治31(1898)年で、“何億年”どころか、たった117年の歴史しかない(だいたい皇紀で数えても日本に何億年の歴史などないのだが)。  
    だが実際、小籔のように「夫婦同姓は伝統」と言って別姓に反対する残念な人は多い。仮に小籔がたった117年の伝統を重んじるというのなら、その「伝統」が生まれた理由を知る必要があるだろう。  
    ・・・


    記事では小藪氏はフジテレビ系「ノンストップ!」にて、夫婦同姓を日本が何億年としてきた伝統、と言及したことに対して、記者が夫婦同姓は1898年の明治民法からだろ!と突っ込んでいる。これを読んでそういえば億単位前の日本ってどんな感じだったんだろうとふと気になってウィキペディアで「地球史年表」を読んだところ、1億年前は恐竜全盛時代って書いており夫婦同姓どころか人類いないレベル、地殻変動の変遷を見ると当時は完全に大陸と一体化し日本列島としての形さえなしていなかった。
    また小藪氏のほかに、華原朋美の彼氏として一時期ワイドショーを賑わしていた明治天皇の玄孫こと竹田恒泰もTwitterで、夫婦別姓で伝統的家族制度が崩壊すると発言し、やはり夫婦同姓は1898年の明治民法からだろ!って突っ込まれている。右翼が夫婦別姓に対して「家族制度の伝統うんぬん」と危機感を表すと、夫婦別姓派がすかさず1898年の明治民法からだろ!で論破するのがお約束となっている。

    創られちゃう伝統――「夫婦別姓」最高裁判決を受けて生じる無邪気な言説(Yahoo!ニュース 12月18日)
    http://bylines.news.yahoo.co.jp/soichiromatsutani/20151218-00052572/

    12月16日、夫婦別姓を認めない民法の規定について、最高裁が合憲の判断を下し、原告の訴えが却下されました。女性差別の撤廃を求める国連の勧告などもあり、かねてから注目されていたこの裁判ですが、15人の裁判官のうち女性3人全員と男性2人の5人が「違憲」としたように、その判断は大きく一致しませんでした。
    ・・・
    さて、こうした判決にはさまざまな方が意見表明をしておりますが、昨日から注目されているのは、明治天皇の玄孫(やしゃご)として知られる竹田恒泰さんです。ツイッターで以下のような発言をして、波紋を呼んでいます。
    ・・・
    いくつか主張をなされていますが、ここで注視するのは4番目「日本の伝統的家族制度が崩壊することにつながる」です。この竹田さんの主張は、本当に正しいのでしょうか? 夫婦同姓は伝統? さっさと結論を言えば、この竹田さんの認識は歴史学的にはかなり怪しいものです。
    ・・・
    近代化は、明治元年から完全に始まったわけではなく、段階的に時間をかけて進んでいきました。近代の国民国家としての制度が概ねまとまったのは、19世紀後半(明治20〜30年代)です。現在にまで繋がる夫婦同姓が施行されるのは、明治民法の始まりでもある1898年(明治31年)のこと。
    ・・・
    よく知られているように、夫婦同姓とは家長相続を基礎とした近代家父長制を支えるものとして欧米に倣って整備されたもので、決して日本の伝統ではありませんでした。そもそも明治以前は、家父長制は武士階級(家族も含めると人口の10%)においてのみ見られたものに過ぎず、豪農や豪商などでは母系相続(姉家督)や末子相続などが広く見られていました。つまり、江戸時代の家族制度は多様だったのです(このあたりは、過去にも「同性パートナーシップ条例から考える『結婚』の未来」という記事で触れたので、そちらもご参照ください)。 ことほどさように、竹田恒泰さんの「夫婦同姓は伝統である」という認識は、歴史的には誤りです。
    ・・・
    エリック・ボブズボウム、テレンス・レンジャー編『創られた伝統』。 エリック・ボブズボウム、テレンス・レンジャー編『創られた伝統』。 そこでひとつ補助線を引いておくことにします。取り上げるのは、エリック・ボブズボウムとテレンス・レンジャーが編んだ『創られた伝統』(1983=1992年/紀伊國屋書店)という本です。その内容はタイトルそのまま。実は伝統ではないのに、近代になって伝統と見なされるようになった文化や社会制度について、研究・分析した専門書です。
    ・・・
    日本にもこうした「創られた伝統」は多く存在します。いまでも一般に広く知られているところでは、10年ほど前には藤原正彦『国家の品格』でもブームとなった「武士道」が挙げられるでしょう。この言葉が日本で広く伝わったのは、20世紀以降のこと。きっかけは、1900年(明治33年)に新渡戸稲造が英語で発表した” Bushido: The Soul of Japan”でした。日本では、1908年に『武士道』のタイトルで出版されベストセラーとなります。後に新渡戸の肖像は2007年まで5000円紙幣にも使われるようになりますが、それもこれもこの『武士道』があったからこそです。
    しかし、日本文化研究者のバジル・ホール・チェンバレンが早い段階で指摘したように、「武士道」という言葉は1900年以前のいかなる辞書にも載っていませんでした。それでも新渡戸が、(キリスト教の影響をふんだんに盛り込んで)「武士道」をでっち上げたのは、日本を見下す西洋諸国に対しての強い反発があったからです。英語で書かれたのも、アメリカやイギリスの読者を想定していたためです。チェンバレンはそんな「武士道」を「新宗教のイノベーション」とまで断じますが、実際に日露戦争後に日本で出版され大ヒットしたように、このコンセプトは日本人にも大受けしたのです。なんだか昨今の「クールジャパン」という言葉を連想してしまいますね。
    話を最初に戻しますが、竹田恒泰さんの意見はかなり恣意的なものですが、そこに強い作為性を感じるものでもありません。ツイッターの文脈を見るかぎり、どうやら本当に知らないのでしょう。そこにあるのは、自分が望む社会制度を「伝統」だと信じたい願望です。伝統は「捏造される」というよりも、竹田さんのように無邪気な姿勢から「創られちゃう」わけです。
    ・・・


    なぜこの問題において別姓に反発するのがきまって保守系の人々で、もれなく日本の素敵な伝統をおどかす左翼を危険視しているのか。私は夫婦別姓が合憲でも違憲でも正直どうでもよいのだが、その一点においてのみ気になっている。
    昨年「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統」(原田実著)という本が出て、10年くらい前に公共広告機構のCMで有名になった江戸のマナー「江戸しぐさ」が嘘っぱちだったと一部で話題になっていたのだが、この本の中で江戸しぐさが育鵬社という保守系の道徳教科書に掲載されたことがクローズアップされたために、今回の夫婦別姓と同じように右翼がでっち上げた伝統だと広く認識されている。しかし個人的に江戸しぐさは左翼の所業としか思えず、右翼が日本の伝統を尊重しているとか左翼がそれを破壊しようとしているというイメージに対して強い違和感をおぼえざるおえなかった。
    左翼が伝統を破壊しようとしているのはある程度事実なのだろうけど、右翼にとっての規範は「伝統」でも「江戸」でもなく、明治(討幕・江戸っ子大虐殺サイド)でなければつじつまが合わない。君が代とか靖国神社だって明治以来なのだから、愛国趣味な概念はたいてい伝統ってほど古くなく、江戸時代よりさかのぼれることはほぼないだろう。
    それでいてなぜ右翼自身までもが明治からの体制や言説を、それ以上古くからある伝統と誤認している例が多いのか。私もあまり日本史には明るくないのだが、天皇における「万世一系」という神話的な概念が「日本の伝統すげぇ」と混同されているのではないかと考えている。
    でもその万世一系な天皇も武士の時代にはあんまり存在感がなく、王政復古したために急に政治の表舞台に出てきたという印象だ。だから右翼を右翼たらしめている、日本は神の国でありその現人神たる天皇をお守りするのは臣民として当然の役目って感じの愛国心は、伝統に培われたというより明治時代の体制がそう整ったと考えたほうが自然なように思う。
    したがって右翼もいっそ日本の素晴らしさすなわち伝統という思い込みを捨て、明治が近代日本のロールモデルであってそれより前は野蛮人で江戸っ子逝ってよしくらいに考えなければ、左翼の伝統主義、今回で言えば「江戸時代の家族制度は多様だったのです」(夫婦別姓の方が伝統的で偉い)を論破できないんじゃないかと思うのだがいかがだろうか。

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