ルーズソックスあらわる

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    以前くしゅくしゅソックス時代のJK(1989〜94に女子高生だった1973〜76年生まれの人々)は丸文字を書かなくなってやたらカクカクした文字書いてたと回想した当ブログだが、そのカクカク文字を「長体ヘタウマ文字」と名付けスポットを当てた本がアクロス編集室編「ヘタウマ世代」。この書が世に出たのはくしゅくしゅソックス時代末期の1994年7月、まさにルーズソックス時代に向けてJKの生き様が刻一刻と変態しているただ中であった。

    くしゅくしゅJKと彼女らの書く独特なタッチ(この書で言う「ヘタウマ」)の字やイラストがちりばめられた表紙カバー。やはりくしゅくしゅ時代なだけあってルーズソックスというには及ばないものの、人によってはスカートがすでに短く、靴下の丈もだいぶ長くなって、制服の着こなしがルーズソックス的シルエットに近くなっている。

    これ↓がくしゅくしゅ時代の文字。ルーズソックス時代に入ると、ここまでカクカクしなくなった。

    今見たところであまり特徴を感じないかもしれないが、80年代までイケてる字が丸文字だったことを考えるとじゅうぶん大きな変化だったのである。80年代における「ヤッダー」「ウッソー」「わかんなーい」と色付リップのおちょぼぐちでキャピってるカワユイ丸文字口調から、「うぜー」「だりー」「ちょームカツクー」といった外資系ブランド口紅塗っったくって悪態つくふてぶてしいカクカク口調への変化が、文字にもあらわれているということだ。

    このカクカク文字が出てきたのは90年くらいと推察していた。確かに皆がこぞって書き始めたのはそのくらいらしく、この本によれば早い子は87,8年頃から書いていたのだという。

    またカクカクJKはシャーペンやカラフルなペンを使いこなすと指摘されているのだが、その点について私はカクカク文字の発達が脱ぶりっ子、脱少女趣味であると同時にゲルインキボールペンの軽い書き味とも切り離せないと考えている。ゲルインキの登場がサクラクレパスのボールサイン(1984年)であり、カクカク文字が出てくるのがその3年後というとやはりタイミング的にゲルインキがカクカク書体を生んだという歴史観とも矛盾しない。

    もともとゲルインキがカラフルな色展開だったことにくわえて、ルーズソックス時代にはぺんてるハイブリッドの「ミルキー」がJKのあいだで人気大爆発したこともギャルの文字史を語るうえで重要である。ともかく芯の丸まった鉛筆とか油性ボールペンでは鋭利なカクカクは書きにくかったのだ。


    ムートン(あるいは安価なムートン風)ブーツは、アグというブランドを中心に2000年代後半ごろから出回り楽な靴の代名詞として現在もクロックスと双璧をなしているが、くしゅくしゅ時代もまたムートンブームだったらしく写真では現在よく見かけるタイプよりも丈が長い。履いているガングロおなごの雰囲気から、ムートンってもしかしてサーファーファッションなのか?と思い調べたところ、そのようである。

     

    シープスキンブーツ

    ムートンのシープスキンで内側がモコモコしたブーツ。LA派のブーツといえばウェスタンブーツが定番だったが、最近はもっぱらシープスキンが主流。ベージュのスェードのモッコリとした足もとは幼っぽく見え、派手すぎるメイクや茶髪を中和させている。

    (107ページ)

     

    またミジェーンとともにコギャル草創期に人気あったらしい「バハマパーティー」とはどのようなブランドだったのか画像検索したところ、バハマ諸島のパリピの画像しか出てこなかった。とほほ。

     

    バハマパーティー

    渋谷ファイヤー通りにあるLAファッションのショップ。他のところに比べ、パステルカラーが多く、スポーツテイストのジャージ素材ものが多い。この店の人気は商品だけでなく、ショップのビニール袋。制服編でも述べるが、巾着型で白地にパープルのロゴ入り袋をたすきがけに持つのが、まさにわかりやすいLAスタイル。

    (107ページ)

     

    また当ブログでは以前、渋谷109はルーズソックス時代までギャルにターゲットをしぼってなくパっとしないファッションビルであったと記したが、この本によれば地下には1994年当時ですでにLA系のショップが集まっており、ミジェーンをはじめ「ロッキーアメリカンマーケット」「アサヒ」などのショップが人気で平日の夕方はコギャルでにぎわっていた。とのことで、ロッキーアメリカンマーケットで検索してみたところちゃんと渋谷109と出てくるので、今もあるのか・・・と思いきや2015年の5月で閉店したそうな。

    店のTwitterで末期の写真を見ると、舞台衣装みたいな服ばかりで全くLAにもアメリカンにも見えないのだが、店自体は109ができる前からあって37年の歴史だったとのことだ。てことは、もともと70年代のサーフィンブームのときに始まったお店なのかもしれない。

    また池袋サンシャインシティYOUも地下1階と1階が93年にリニューアルし、サーフショップ「CCC」など109地下と並んでコギャルに人気を博したようだ。93年11月の聞き取り調査によれば「よく行くのは渋谷。自分と似た感じの恰好をしている人が多いし見てても楽しい。ピンクフラミンゴとか109によく行きます。池袋だとサンシャインにしか行かない。YOUにはイケイケの服のお店がかたまってるからここに来れば全部済んじゃうから」(103ページ)とのことである。

    ちなみに2013年ごろ韓国と日本で流行したMCMもコギャルのアイテムだったという。また以前ギャルという呼称はもっぱらオッサンが使うのみでギャル本人はギャルを自称しなかったという真偽不明の説をチラリとご紹介したが、それを裏づけるような記述もあった。

     

    ・・・いま彼女たちがいうLAは、茶髪のロングヘアで、ルーズロングセーターにスパッツ、足もとはシープスキンブーツ、またはストライプのパンツにリボンパンプスといったファッションだ。真ピンクの口紅に白いマニキュアなど派手なメイクで、まさにパラギャルとかコギャルとかいわれるスタイルなのだ。しかしこの呼び名、オトナが彼女たちの派手さ、遊び人ぽさをおもしろおかしく表している、というのを察知しているようで、自分たちではあまり使わないようだ。「この格好?まぁコギャルかなー(笑)」というように自嘲的には使っていたが。

    (102ページ)

     

    94年でマイメロは先見の明ありすぎ。ルーズソックス時代に入ってキティ風にリニューアルするまでサンリオショップにマイメログッズはほぼなかったように記憶しているので、このマフラーたぶん古着とかじゃないだろうか。

    丸文字が廃れたことからもおわかりいただけるように、くしゅくしゅJKは80年代のノリを否定し70年代にシンパシーをおぼえていた世代であるから、それまでのサンリオに乱立していたファンシー系、おもしろ系よりもキティちゃんみたいにスタンダードなキャラが再評価されるようになっていた。当時18歳のフレンチカジュアル系の女の子の証言では、たあ坊や座敷豚が人気爆発したけど中学に入ったら全然使わなくなったとある。

    とするとファンシー離れは89年あたりから進行していたと考えられるが、当ブログにおいてくしゅくしゅソックス世代は1989〜94年に女子高生だったという区分であるし、上に書いたように女子高生の文字がカクカクし始めたのもちょうどそれくらいってことですべてのつじつまが合う。この本によればキャラクターはサンリオよりもソニープラザが人気だそうで、確かにルーズソックス時代に入ってコギャル=キティちゃん、もしくはマイメロというイメージが確立されるまで、しばらくソニプラに取り扱っているバーバーパパとか欧米キャラの人気が高かった。

    ソニプラがアメリカンな雰囲気にリニューアルしたのが1988年とのことで、ルーズソックスの素になっていると一部で伝えられていた「スラウチソックス」もヒット商品として名前が上がっている。私も94年ごろというと中学生で、ソニプラに通いアメリカンな文具や雑貨、お菓子買ってたために当時の感じは全然思い出せるのだが、逆にアメリカン風味にリニューアルする前の時代はどういう店だったのか分からない。

    この本では、キティちゃんとミッキーが人気というJKの証言が多いが、ミッキーはもう普遍的すぎてあまり時代を感じないので(といっても2000年ごろの熊のプーさんブームなどディズニー系でもはやりすたりがあるようだが)やはりキティちゃんがもうこの頃からジワジワ来てたってとこに注目すべきだろう。またキティちゃんブームの前一瞬だけミッフィーというキティちゃん似た兎キャラも人気あったのだが、今思うとあれがくしゅくしゅ時代=欧米キャラ(脱ファンシー)からルーズソックス時代=キティちゃん(ガラパゴス化)への過渡期だったと思う。

    ルーズソックス時代以降は圧倒的なキティちゃん(とマイメロ)一強体制だったために、くしゅくしゅ時代をいろどったバーバーパパのほかピングー、エスパパ、シンプソンズ、ケンケンなどが一気に姿を消した感があったが、そうした欧米系以外にもギターを弾くレトロなタッチのキャラがいた。もう20年ほど全く思い出すこともなかったのだが、偶然くしゅくしゅ時代の吉川ひなのがそのキャラのカバンを持っている写真を見かけて、あれ何だったんだと気になりだした。

    その後「ヘタウマ世代」買ってふとコギャルの写真(上画像)に目をやると、またしてもカバンに見覚えのあるキャラ。ギターを鳴らす音からきているのか、その名前を「ポロリン」というようである。

    ひとまず名前分かったらググれるし良かった。しかしスタンダードな欧米系キャラや固定ファンの多いサンリオと違い、ポロリンやエスパパ、ミスタードーナッツの「おもちカエル」などはくしゅくしゅ時代に埋もれたまま誰にも思い出されることはないであろう。

    「バザールでござーる」「ポリンキー」など佐藤雅彦のCMやウゴウゴルーガのキャラクターの数々もくしゅくしゅJKに人気があった。ルーズソックス時代=キティちゃん時代にいたる脱ファンシーの流れの中でじつにさまざまなキャラが現れては消えて逝ったのだ。

    ルーズソックスは制服の着こなしでしか見かけなかったが(普段着はナマ足に厚底ロングブーツやミュール)、くしゅくしゅソックスはショートブーツからチラリとのぞかせるのも可愛かった。というかこのくしゅくしゅの履き方は、編み上げやサイドゴアのショートブーツが人気爆発しているここ数年でもよく見かける。

    やはりショートブーツからくしゅくしゅをチラ見せしているが、ウエスタンブーツやつっかけを履いた者もいる。くしゅくしゅソックスにつっかけの組み合わせは2015年の春先にもアパレルが流行らせた。

    しかしこれ半袖や網状の袋などを見るに、ブーツはいてるけどじつは夏なのではなかろか?またこの写真からシャツをズボンに入れるのがダサイって認識がすでに広まっていたことがうかがえる。

    そしてようやく本題。制服におけるくしゅくしゅ→ルーズソックスへの流れである。

    91か92年くらいからふつうの靴下をたるませてはくのがJKのあいだで人気となり、95年をさかいにルーズソックスが一気に普及するというのがわが記憶にもとずいた歴史認識だったのだが、この本で94年の写真を見るとほとんどくしゅくしゅではありながらもすでにルーズソックスと呼べるレベルの靴下をはいたJKがいる。たとえば上の写真(94年2月新宿)では、一番手前のJKの靴下がまだくしゅくしゅレベルであるいっぽう、後列にいる左から二番目と四番目のJKの靴下は完全にルーズ化しているのがおわかりいただけるだろうか。

    「ボリュームソックス大集合。くしゅくしゅどころかたるみが段になっている」と解説されているのだが、まさかこのたるみが段になったほうが長らくメジャーになるとは当時の人は思いもよらなかったにちがいない。ちなみに後ろにある山一證券って会社はルーズソックス時代に亡くなった。

     

    ラルフローレンソックス

    91〜92年に女子高生ソックスの主流を占めたのが、ワンポイント付きのショートソックス。ごく普通にくるぶしの上くらいでとめてはいていた。最近ではルーズタイプが人気だが、定価2100円とやや高め。

     

    ルーズソックス

    ソニープラザで3足1200円のアメリカ製ルーズソックス、色は白が定番。くるぶしのあたりで少したるませると足首のくびれがなくストンとしたサリーちゃん足になる。制服ではないが、93年夏は霜降りのルーズに健康サンダルをあわせるのが流行した。

     

    特大ルーズソックス

    横浜そごう、丸井上野店など限られたところでしか売っていないというもっぱらの噂の超厚手ソックス。アメリカのD.G.スミスというブランドで1足1200〜1300円。

    (139ページ)

     

    私がルーズソックスを初めて見たのはたぶん95年なので、94年にルーズってあったのか。と驚いたが、94年4月の証言では「このソックスはD.G.スミスというブランドのもので上野の丸井で1300円でした。たぶんここでしか売っていないと思う」(この本はEGスミスをDGスミス、くしゅくしゅソックスをぐしゅぐしゅソックスって書いてる箇所がけっこうあるけど気にしないでおくれ)とあるので、94年時点では東京のような大都会でもまだ貴重だったようでまだ写真も少ない。てことは田舎でルーズが手に入るようになったのは記憶どおり95年と考えてよさそうだ。

    しかしくしゅくしゅ時代より前、80年代って悪い奴といやカバンをペッチャンコにし、学生服の丈を詰め、ズボンやスカートにボリューム出すような改造し、先公に刃向ったりうんこずわってたと思うのだけど、くしゅくしゅソックス時代の高校って「ぼくたちのドラマシリーズ」や内田有紀、マンガ「天使なんかじゃない」などブレザーのイメージがかなり強い。男も剃りこみとかよりロン毛やモミアゲ伸ばしたようなのが格好良かった。

    ブレザーは学ランとちがい、ズボンやスカートに柄が入っていることもあってボンタンやロングスカートではさまにならぬ。てことは制服の着こなしをくしゅくしゅ化(スカート短く靴下が長く)させヤンキーを絶滅危惧種化させた原因のひとつがブレザーではないかと思うのだが、ブレザーがいつ増えたのかとか調べてないのでこれはまだ仮説だまりである。

    また制服の違いだけでなく、わがルーズソックス世代はあまり先生も厳しくなかった。話を聞くと昔はスパルだったけど、体罰とか問題になってキャラ変えたらしい。

    だからシンナーとか夜の校舎窓硝子壊してまわるよな管理教育を舞台とした尾崎豊的反抗に戸塚宏的暴力教師ってな対立構造ってよりは、学校に化粧ポーチや写ルンですやポケベル持ってくるなど学級崩壊的なゆるい荒れ方だった。そのへんが80年代セーラー型(ヤンキー・ぶりっこ・丸文字)から90年代ブレザー型(くしゅくしゅソックス・カクカク文字・ポケベル)にいたる意識の差であり、やがて95年にコギャル文化が大爆発する流れとしてくすぶっていたのだと思う。


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      • 2017.07.22 Saturday
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